• 解決実績>
  • 停車中の衝突事故後、通院中に治療費が打ち切られるも後遺障害14級の認定を受け示談が成立した事例>

    【解決事例】停車中の衝突事故後、通院中に治療費が打ち切られるも後遺障害14級の認定を受け示談が成立した事例

    事故状況

    信号待ちで停止中、前方から自動車に衝突され、腰背部挫傷、外傷性頸部症候群の傷害を負った。

     

    後遺障害

    後遺障害14級

     

    交渉結果

    保険会社の提示額 既払い金を除き170万円 → 受任後290万円で示談成立。

     

    経過

    自覚症状が強く、腰や首の疼痛のため神経ブロック注射の治療を受け、長期通院していたところ保険会社から治療費を打ち切られ、その後は健康保険により自費で治療費を負担し、 1年後に症状固定。

    主治医が後遺障害診断書を作成してくれないとして、弁護士相談。

    脊髄の専門医も受診したいとの被害者の希望があったため、病院同行する等し、対応。

    その後、主治医が後遺障害診断書の作成を応諾。

    後遺障害申請をした結果、 14級の認定を受ける。

     

    コメント

    被害者が主治医と相手保険会社に対し強い不信感を持っていた。結果的に主治医に適切な後遺障害診断書を作成して貰えたことが大きかった。

     

    被害者

    女性会社員(事故当時40歳)

     

    経過

    事故後の1年間は入通院治療に専念し、完全休業した。

    1年後に職場に復職したが、従事する仕事は、事故前に比し、書類作成等の単純作業となり、且つ短時間勤務となった。

    復職後は、集中力低下やイライラ(易怒性)等によって、仕事の効率が低下するとともに職場の人間関係にも亀裂が生まれるようになり、疲労と気持ちの萎えにより、隔日を含む短時間勤務を続けざるを得ず、遂に完全復帰は叶わなかった。

    この間、脳神経外科、メンタルクリニック、耳鼻咽喉科等、複数の診療科に継続的に通院し、6年後に症状固定。

    固定時の残存症状は、頭痛、嘔気、フラッシュバック、集中力低下、易疲労感、めまい、嗅覚の低下(異臭)等。

    自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請をしたところ、脳外傷による高次脳機能障害が残存していると判断され、その障害の程度は、「神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの」として、自賠責保険後遺障害等級9級10号に該当するとされた。

    その後、加害者の保険会社との交渉のため、弁護士相談をし、当職に交渉依頼。

    受任後は、本人が9級以上の後遺障害に該当するのではないか?と等級に不満を持っていることが分かったため、交渉に先立ち、まず自賠責保険への異議申立を検討したが、9級以上の後遺障害の認定を受けるための医学的他覚所見を見い出すことは出来なかったので、異議申立は断念し、後遺障害9級を前提に保険会社との交渉をスタートさせた。

    示談交渉においては、保険会社から、示談レベルでは最上位の金額を提示して貰えたが、本人は、職を失う事への怖れとともに将来の経済的困窮に対する心配が非常に強かったため、更なる増額を求めて、示談を打ち切り、東京地裁への訴訟を提起することを決断。

    訴訟提起にあたっては、本人のメンタル面のストレス軽減の見地から、訴訟上の争点を極力減らした訴状を作成・提出した。そうしたところ、訴状が加害者に送達後~初回期日までの間に、早くも相手保険会社の代理人弁護士から和解の打診があった。

    初回期日において、和解金四千数百万で訴訟上の和解が成立した。

     

    本件の特徴

    被害者は、事故後から様々な自覚症状(頭痛、嘔気、フラッシュバック、集中力低下、易疲労感、めまい、嗅覚の低下)に悩まされ、6年間という長期にわたり脳神経外科やメンタルクリニックで治療を受け続けたが、症状は無くなることなく、自賠責保険へ後遺障害の認定を申請したところ高次脳機能障害であるとされた。

     

    自賠責保険(共済)における高次脳機能障害とは、「自賠責保険における高次脳機能障害認定システム検討委員会」の平成23年3月4日付け報告書によると、「脳外傷後の急性期に始まり多少軽減しながら慢性期へと続く、次の特徴的な臨床像である」とされ、「a)典型的な症状」として、多彩な認知障害、行動障害および人格変化が指摘されている。

     

    1)認知障害とは、記憶・記銘力障害・注意・集中力障害、遂行機能障害など、2)行動障害とは、周囲の状況に合わせた適切な行動ができない、複数のことを同時に処理できない、職場や社会のマナーやルールを守れない、話が回りくどく要点を相手に伝えることができない、行動を抑制できない、危険を予測・察知して回避的行動をとることができないなど、3)人格変化とは、受傷前には見られなかった発動性低下と抑制低下であるといわれる。

     

    以上の知見を本件にあてはめると、被害者が、事故後、疲労感や集中力の低下のためフルタイム勤務が出来なくなった事は、集中力障害(認知障害)や自発性・気力の低下(人格変化)の現れとして捉える事ができるし、職場の人間関係が原因で腹を立てて仕事を休んでしまったなどというエピソードは、行動障害(社会適応能力の低下)や易怒性・自己中心性(人格の変化)の現れとして捉える事ができるので、訴状ではそのような事実を丁寧に主張したが、そのこともあってか、初回期日での和解という珍しい、超早期解決が実現できた。

     

    因みに、本件は、平成29年~平成30年の訴訟で、改正民法が施行前だったため、判決となれば、事故後~判決までの間、年5分という高利の遅延損害金が課される事が明かであったため、訴状を提出した途端に、相手から和解の申し出があったものと思われる(もっとも和解時点で既に事故後9年経過していたので、こちらとしても相応の損害金加算を条件に和解を成立させた)。

     

    担当裁判官&当職のコメント

    結局、裁判所は訴状を受付けて形式的な審査をしただけで、中身の審理は何もせずに終わったので、非常に楽でした。担当裁判官が、初回期日の法廷で、こんな事もあるのですね!と明るく言っていたのはその事を物語っています(こんな解決はありませんよ!とも仰っていました)。

     

    裁判は長くかかるので誰も喜びません。弁護士の真の役割は、なるべく裁判所のお世話にならずにスパッと早く適正な解決に導くことでしょう。本件では、少しはそのような理想的な活動が出来たものと感じましたし、何よりも依頼者(と依頼者のお母様)が非常に感謝してくれたので、思い出に残る事件となりました。

    被害者

    20代男性(会社員)

     

    傷病名

    外傷性頸部症候群、腰椎捻挫(後遺障害なし)

     

    事故の概要

    片側2車線道路の第2車線を走行していた被害者は、反対車線沿いの駐車場に入るため、右折ウィンカーを点滅させて第2車線上に停止していました。

     

    その際、駐車場から後退しながら出てきた車があり、被害者はその動きを確認して停止していたところ、後退車がそのまま接近して衝突しました。

     

    【事故現場見取図】

     

    交渉から裁判までの経緯

    事故直後から物損の示談交渉を行いましたが、過失割合で折り合わず交渉は不成立。被害者は無過失を主張しましたが、加害者側は「被害者にも2割の過失がある」として譲らず、治療終了後の人身示談交渉でも合意に至らなかったため、訴訟提起に踏み切りました。

     

    裁判の内容

    加害者側は、被害者は危険を察知できたのだから、駐車場への進入を避けるか、クラクションを鳴らすべきだったと主張しました。

     

    しかし裁判所は、

     

    ・駐車場に進入するため付近の路上で一時的に待機する行為は通常の運転行動といえる。
    ・後退車が2車線を横切って転回することまで予測しなかったとしても、安全運転義務違反とはいえない。

     

    と判断し、被害者に過失は認められないと結論づけました。

     

    判決の認容額

    物損・人身損害計 約114万5千円+弁護士費用+遅延損害金
    → 総額約124万円の支払いが命じられました。

     

    小林のコメント

    軽微な事故では通常、半年程度で示談が成立することが多いですが、本件は加害者が過失割合を一切譲らず、謝罪もないまま時間だけが経過したため、裁判に至りました。

     

    事故から約2年5か月後に判決が下され、被害者の主張が全面的に認められた事案です。

     

    因みに、示談交渉時の請求額は、物損 約14万円、人身損害 約90万円、合計約104万円でした。

     

    【2025年10月5日更新】
    執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか

    お気軽にお問合せ下さいませ

    ImgTop5.jpg
    ●ホーム ●弁護士紹介 ●事務所紹介 ●アクセス ●弁護士費用
     
    トップへ