【バイク事故判例①】バイク直進中、右折車と衝突し、手・足に機能障害や疼痛(後遺障害併合10級)が残った40代男性のケース
(平成29年12月27日京都地裁判決/出典:交民 50巻6号1597頁等)
関係車両
バイク(普通自動二輪車)vsトラック(普通貨物自動車)
事故の状況
交差点を直進中のバイクと右折トラックとの衝突。
トラックは、前方にバイクを認めたが、先に交差点を通過できるものと思い発進。ところが、実際にはバイクとの距離が近かったためバイクより先に交差点を通過できず、トラック前部をバイクに衝突させ、バイクが転倒。
けが(傷害)
左大腿骨内果骨折、右足関節外果骨折、右母趾基節骨骨折、両下腿擦過傷、右橈骨遠位端骨折、右環指基節骨骨折、右小指PIP関節脱臼
入院等の期間
①入院約2ヶ月(67日)
②通院約1年(実日数は250日)
後遺障害
左大腿骨内顆骨折後の左膝痛(14級9号該当)、右手関節の機能障害(12級6号該当)、右下肢及び右足趾の機能障害(併合11級相当)により、併合10級相当
過失の割合
バイク15%、トラック85%
判決のポイント
①過失割合
交差点内におけるトラックの通行経路やバイクとの距離を緻密に認定した結果、トラックにはバイクとの距離を見誤って右折を開始した点に過失があるとし、一方、バイクにも軽度の前方不注視があったとして、両者の過失を認定した(トラックの早回り右折や直近右折は否定)。
②逸失利益
被害者は鉄道乗務員。事故後、復職を果たし、事故前の収入と比較して減収しなかったため、後遺症による逸失利益は認められないとの主張が相手からなされた。しかし、裁判所は、電車のハンドルを握りこみにくいなどの制約を受けているとし、それにもかかわらず、減収がみられないのは、従前から電車の運転という技能を有し、かつ、事故後もその技能を活用できているからであって、その努力による面が大きい等と述べ、67歳までの逸失利益を認めた。
③慰謝料(後遺障害分)
後遺障害の内容及び程度、労働能力喪失率等に照らし、後遺障害慰謝料は800万円と認定された。
小林のコメント
後遺障害10級の慰謝料は通常550万円程度ですが、本件では800万円と認定されました。
一方、後遺障害10級の労働能力喪失率は27%なので、通常は、症状固定から就労可能年齢(67)まで事故前の収入の27%が逸失利益と認定されますが、本件では、被害者が定年(60歳)まで鉄道会社に勤務し続ける蓋然性が高いことを理由に、定年までの労働能力喪失率については18%と低めに認定するにとどめました。
慰謝料は、諸般の事情をもとに裁判官が裁量で決められるので、実際の裁判では、調整要素として機能します。このような慰謝料の調整機能を生かし、本件では、逸失利益の認定を控えめにした分、慰謝料を増額したとみることが出来ます。
バイク事故の被害の特徴の最新記事
- 【バイク事故判例㉔】バイク走行中、四輪車に接触・転倒し、6級後遺障害を残した79歳女性(薬局経営)が、685万円余りの支払を求めて提訴したが、既払い金により原告の損害は全て填補されているとして請求が棄却された事例【2023年3月17日更新】
- 【バイク事故判例㉓】赤信号で停止中の追突事故により、後遺障害等級併合14級の認定を受けた被害バイクの運転者(60代男性)が、既払い金控除後の損害賠償金として2,000万円の支払を求めて提訴した事案に関し、270万円余りの支払を命じる判決が下された事例【2023年2月21日更新】
- 【バイク事故判例㉒】T字路交差点における右折バイクと直進バイクとの衝突事故。直進バイクの所有者と運転者が原告となり、車両損害と人身損害等の賠償を求めた事案
- 【バイク事故判例㉑】直進中のバイク同士の出会い頭衝突事故により高次脳機能障害の後遺症が残った被害者(40代男性)に関し、被害者過失を2割と判断し、被害者の子らの慰謝料請求を否定した事例。
- 【バイク事故判例⑳】直進バイクと右折車の衝突事故において、早回り右折をした右折車の過失と、速度超過のバイクの過失を比較衡量し、過失割合をバイク15、右折車85とした事例
- 【バイク事故判例⑲】バイクで直進中、路外の車庫に進入しようとした右折車と衝突し、右腕を骨折し変形障害(後遺障害12級)が残ったケース
- 【バイク事故判例⑱】信号機のない十字路交差点において,直進バイクと直進自動車とが出合頭衝突した事故において、バイク運転者(女性)の眼の症状については後遺障害を否定したが、眼の症状が軽快するまでに被った精神的苦痛を斟酌し、請求額以上の傷害慰謝料が認められたケース
- 【バイク事故判例⑰】山間道路を2人乗りで走行中、剥離したコンクリート片を跳ね上げ、バイクが損傷。転倒を回避した際に、左手TFCC損傷の傷害を負ったとして、道路を管理する県を被告として訴訟提起したが、県の責任は認められたものの、TFCC損傷との因果関係は否定されたケース
- 【バイク事故判例⑯】第2車線から進路変更してきた加害車両との衝突事故。 事故後、後遺障害12級を前提とする示談が成立したが、示談成立の6年後に、自賠責保険への異議申立ての結果、高次脳機能障害により後遺障害等級7級と認定され、追加支払を受けた20代男性会社員のケース
- 【バイク事故判例⑮】バイクで直進中、交差点で出会い頭衝突をし、顔面に醜状障害(後遺障害12級)が残った44歳男性のケース
- 【バイクの交通事故判例⑭】バイクが加害車両の後方から同方向に進行中、衝突し、大腿部の瘢痕(後遺障害14級)が残った37歳女性のケース
- 【バイク事故判例⑬】運転する原付バイクが停止車のタクシーのドアに衝突し、握力低下等(後遺障害14級)が残った33歳男性調理師のケース
- 【バイク事故判例⑫】バイクが狭い道路を走行中、対向四輪車と衝突し、生殖器の障害等(後遺障害10級)が残った30代女性のケース
- 【バイク事故判例⑪】高速道路で車線変更車がバイクに接触し、視力障害(後遺障害8級)が残った46歳男性のケース
- 【バイク事故判例⑩】赤信号を無視して交差点に進入した加害車両がバイクに衝突し、高次脳機能障害(後遺障害1級)が残った40代男性のケース
- 【バイク事故判例⑨】バイクで直進中、路外施設に進入しようとした右折車と衝突し、鎖骨骨折後にCRPS様の難治性疼痛(後遺障害12級)が残った50代男性のケース
- 【バイク事故判例⑧】バイク走行中、追越し車に衝突され、右膝の靱帯損傷による右膝痛等(後遺障害12級)が残った33歳女性のケース
- 【バイク事故判例⑦】バイクで直進中、右折車と衝突し、顔面醜状や味覚障害等(後遺障害11級)が残った29歳男調理師のケース
- 【バイク事故判例⑥】バイク走行中、交差点を右折した際、対向直進車と衝突し、股関節の機能障害(後遺障害12級)が残った28歳女性のケース
- 【バイク事故判例⑤】バイクで走行中、車線変更しようとして駐車車両に衝突し、両下肢麻痺の後遺障害(後遺障害2級)が残った男子大学院生のケース
- 【バイク事故判例④】直進中のバイクが、対向転回車に衝突され、右膝・右足関節の機能障害等(後遺障害併合6級)が残った46歳男性のケース
- 【バイク事故判例③】バイクで直進中、右折車と衝突し、高次脳機能障害(後遺障害2級)が残った38歳男性のケース
- 【バイク事故判例②】バイクで直進中、転回車に衝突され(過失ゼロ)、顔面に醜状障害(後遺障害12級)が残った19歳男性のケース
- バイク事故の被害の特徴(警視庁の統計から)