【バイク事故判例⑧】バイク走行中、追越し車に衝突され、右膝の靱帯損傷による右膝痛等(後遺障害12級)が残った33歳女性のケース
(平成22年 2月17日東京地裁判決/出典:自保ジャーナル 1831号68頁等)
関係車両
バイク(普通自動二輪車)vs普通乗用自動車
事故の状況
バイクを追い越そうとした乗用車が対向車を避けようとしてバイクに衝突した。尚、乗用車の運転者は酒気帯び運転で、事故後一旦逃走し、しばらくして事故現場に戻った。
けが(傷害)
右膝後十字靱帯損傷、右肩鎖骨関節挫傷、インピンジメント症候群、遷延性抑うつ反応、両肘部右膝部肥厚性瘢痕
入院等の期間
通院約1年3ヶ月(実日数は68日)
後遺障害
右膝後十字靱帯損傷による右膝痛(12級13号)、遷延性抑うつ反応(14級9号)により、併合12級
過失の割合
バイク0%、乗用車100%
判決のポイント
①過失利益
被害者の事故当時の職業は宮大工見習い。被害者は、宮大工の年収(180万円)ではなく、賃金センサス女子大学・大学院卒全年齢平均(平成19年度446万1200円)を基礎収入として逸失利益を算定・主張した。
これに対し、裁判所は、被害者は事故当時33歳であり、事故当時の年収が180万円であったことから、直ちに上記の賃金センサスの金額を基礎収入として採用することには躊躇を覚えるとしながらも、被害者の学歴・職歴の他、事故後転職し、相応の収入を得ていたことを重視し、本件事故当時の収入が低かったのは宮大工の見習いであったことが影響していると述べて、基礎収入は、上記賃金センサスの金額446万1200円の95パーセントである423万8140円とするのが相当であるとし、就労可能年齢である67歳までの33年間、14パーセントの労働能力を喪失したことを前提に逸失利益を算定した。
②転職に伴う転居費用等
被害者は、後遺障害の影響により、事故当時の職業であった大工の仕事を継続するのは不可能で、新たな職業を探す必要があったとの理由で、就職活動のための交通費や、転職に伴う転居費用(敷金を除く礼金、仲介手数料、火災保険料、鍵交換代及び部屋探しのため往復交通費合計約20万円)も、損害として認められた。
③慰謝料(後遺障害分)
後遺障害は併合12級に該当するが、等級認定を受けた後遺障害のほかにも、女性である原告の両肘と右膝に肥厚性瘢痕が残ったこと、後遺障害の影響により転職を余儀なくされたこと等を考慮して、と370万円が相当であるとされた。
小林のコメント
裁判では、被害者は、自賠責保険で認定されなかった右肩痛も後遺障害に当たると主張しましたが、否定されました。
しかし、後遺障害12級の慰謝料は通常290万円程度のところ、本件では、上記の事情を汲んで増額されました。
また、傷害(入通院)慰謝料についても加害者が酒酔い運転だった事等の事情を汲んで通常より多い金額(130万円)が認定されました。
バイク事故の被害の特徴の最新記事
- 【バイク事故判例㉔】バイク走行中、四輪車に接触・転倒し、6級後遺障害を残した79歳女性(薬局経営)が、685万円余りの支払を求めて提訴したが、既払い金により原告の損害は全て填補されているとして請求が棄却された事例【2023年3月17日更新】
- 【バイク事故判例㉓】赤信号で停止中の追突事故により、後遺障害等級併合14級の認定を受けた被害バイクの運転者(60代男性)が、既払い金控除後の損害賠償金として2,000万円の支払を求めて提訴した事案に関し、270万円余りの支払を命じる判決が下された事例【2023年2月21日更新】
- 【バイク事故判例㉒】T字路交差点における右折バイクと直進バイクとの衝突事故。直進バイクの所有者と運転者が原告となり、車両損害と人身損害等の賠償を求めた事案
- 【バイク事故判例㉑】直進中のバイク同士の出会い頭衝突事故により高次脳機能障害の後遺症が残った被害者(40代男性)に関し、被害者過失を2割と判断し、被害者の子らの慰謝料請求を否定した事例。
- 【バイク事故判例⑳】直進バイクと右折車の衝突事故において、早回り右折をした右折車の過失と、速度超過のバイクの過失を比較衡量し、過失割合をバイク15、右折車85とした事例
- 【バイク事故判例⑲】バイクで直進中、路外の車庫に進入しようとした右折車と衝突し、右腕を骨折し変形障害(後遺障害12級)が残ったケース
- 【バイク事故判例⑱】信号機のない十字路交差点において,直進バイクと直進自動車とが出合頭衝突した事故において、バイク運転者(女性)の眼の症状については後遺障害を否定したが、眼の症状が軽快するまでに被った精神的苦痛を斟酌し、請求額以上の傷害慰謝料が認められたケース
- 【バイク事故判例⑰】山間道路を2人乗りで走行中、剥離したコンクリート片を跳ね上げ、バイクが損傷。転倒を回避した際に、左手TFCC損傷の傷害を負ったとして、道路を管理する県を被告として訴訟提起したが、県の責任は認められたものの、TFCC損傷との因果関係は否定されたケース
- 【バイク事故判例⑯】第2車線から進路変更してきた加害車両との衝突事故。 事故後、後遺障害12級を前提とする示談が成立したが、示談成立の6年後に、自賠責保険への異議申立ての結果、高次脳機能障害により後遺障害等級7級と認定され、追加支払を受けた20代男性会社員のケース
- 【バイク事故判例⑮】バイクで直進中、交差点で出会い頭衝突をし、顔面に醜状障害(後遺障害12級)が残った44歳男性のケース
- 【バイクの交通事故判例⑭】バイクが加害車両の後方から同方向に進行中、衝突し、大腿部の瘢痕(後遺障害14級)が残った37歳女性のケース
- 【バイク事故判例⑬】運転する原付バイクが停止車のタクシーのドアに衝突し、握力低下等(後遺障害14級)が残った33歳男性調理師のケース
- 【バイク事故判例⑫】バイクが狭い道路を走行中、対向四輪車と衝突し、生殖器の障害等(後遺障害10級)が残った30代女性のケース
- 【バイク事故判例⑪】高速道路で車線変更車がバイクに接触し、視力障害(後遺障害8級)が残った46歳男性のケース
- 【バイク事故判例⑩】赤信号を無視して交差点に進入した加害車両がバイクに衝突し、高次脳機能障害(後遺障害1級)が残った40代男性のケース
- 【バイク事故判例⑨】バイクで直進中、路外施設に進入しようとした右折車と衝突し、鎖骨骨折後にCRPS様の難治性疼痛(後遺障害12級)が残った50代男性のケース
- 【バイク事故判例⑦】バイクで直進中、右折車と衝突し、顔面醜状や味覚障害等(後遺障害11級)が残った29歳男調理師のケース
- 【バイク事故判例⑥】バイク走行中、交差点を右折した際、対向直進車と衝突し、股関節の機能障害(後遺障害12級)が残った28歳女性のケース
- 【バイク事故判例⑤】バイクで走行中、車線変更しようとして駐車車両に衝突し、両下肢麻痺の後遺障害(後遺障害2級)が残った男子大学院生のケース
- 【バイク事故判例④】直進中のバイクが、対向転回車に衝突され、右膝・右足関節の機能障害等(後遺障害併合6級)が残った46歳男性のケース
- 【バイク事故判例③】バイクで直進中、右折車と衝突し、高次脳機能障害(後遺障害2級)が残った38歳男性のケース
- 【バイク事故判例②】バイクで直進中、転回車に衝突され(過失ゼロ)、顔面に醜状障害(後遺障害12級)が残った19歳男性のケース
- 【バイク事故判例①】バイク直進中、右折車と衝突し、手・足に機能障害や疼痛(後遺障害併合10級)が残った40代男性のケース
- バイク事故の被害の特徴(警視庁の統計から)