【弁護士コラム】近時の民事交通事故訴訟について

東京地裁の受理件数

東京地裁には交通事故訴訟を集中的に扱う専門部があります。

 

その専門部の裁判官によると、同部で受理した事件数は、平成30年に過去最高の2,249件(概数)となったのをピークに、コロナ禍の影響もあり減少傾向にあるそうです。

 

ただ、交通事故の発生件数自体が減少している割には、交通事故訴訟はさほど減少していないと報告されています。

 

事件数が減少しない理由

理由は幾つかあるものの、弁護士費用補償特約が付いた自動車保険が広く普及していることが大きいと分析されています。

 

弁護士費用が保険で賄えれば、少額事件でも躊躇なく訴訟提起できるため、少額訴訟が増加した分、全体の事件数もほぼ横ばいになっているようです。

 

令和4年の和解率は71.1%

交通事故訴訟は和解率が高く、令和4年の和解は71.1%でした。

 

判決だと、判決結果に不服がある方が控訴を提起して解決が長引きますが、裁判上の和解により紛争が終局的に解決するため、早期解決を望む当事者が和解を選択することが多く、それが和解率の高さに繋がっているようです。

 

(以上、令和6年(公財)日弁連交通事故相談センター東京支部発行 民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準下巻(講演録編)より)

 

加害者側からの提訴

また、令和元年以降、加害者側から訴訟を提訴する「債務不存在確認請求訴訟」が10%以上を占めているとの報告もあります(令和4年(公財)日弁連交通事故相談センター東京支部発行 民事交通事故訴訟・損害賠償額算定基準下巻(講演録編)。

 

債務(さいむ)不存在(ふそんざい)確認(かくにん)請求訴訟とは、加害者が被害者に対して、交通事故に関する損害賠償債務が存在しないことの確認を求める訴訟類型です。

 

通常は、被害に遭った側が加害者を訴えて、賠償金の支払いを請求しますが、逆に、加害者から、既に支払った以上の賠償金の支払い義務はないとして、債務不存在確認訴訟が提起されることが増えてきています。

 

私自身も、以前よりも簡単に債務不存在確認訴訟が起こされるようになったと感じます。

 

【2024年5月16日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか

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