【解決事例】高速道路を走行中、追越し車線から車線変更してきた車両との接触を避けるためブレーキをかけ停止したところ、後方から来たトラックに追突された被害者が、物損に関しトラック運転者から提訴され、無過失であることを前提に、裁判上の和解が成立した事例

被害者

40代男性

 

事故の詳細

被害車両はトラックに追突された衝撃で前方に押し出され、車線変更車に衝突した。つまり自車の後部に追突された直後に、自車の前部が前方車に衝突したという玉突き事故により、瞬時に2度の衝撃を受け、左前方に約40メートル飛ばされ、高速道路の出口付近で逆向きで停止した。

 

事故~裁判まで

事故後、救急隊が駆けつけたが、そのとき被害者は意識障害により、救急隊に名前を聞かれても答えられず、入院となった。退院後も頭痛等の症状が続き、数ヶ月後に慢性硬膜下血腫を生じ、血腫除去手術を受け経過観察中であったところ、突然、トラック運転者から裁判を起こされた。

 

訴えの内容は、被告2名(被害者+車線変更車の運転者)に対し、トラックの修理代を支払うよう求めるものであった。

 

これに対し、被害者は、自己の車両損害(物損)について支払を求める反訴請求を提起し、車線変更車の運転者も同様に反訴請求を起こし、結局、3つの訴えが同時に審理されることになった。

 

裁判の争点:3者の過失割合

裁判では、トラック運転者、車線変更車の運転者、被害者の3名について、その過失割合が争点となりました。

 

被害者は無過失を主張しました。つまりトラック運転者に対しては、居眠り運転により追突されたと主張し、車線変更車の運転者に対しては、車線変更の合図を出しながら直ぐに車線変更しなかったために停止を余儀なくされたと主張しました。

 

裁判所の判断

裁判所は、被害者については、被害者がブレーキをかけて停止したのは、車線変更車との衝突を避けるためにやむを得ず行ったものであり、正当な理由があるので、過失はないと判断しました。

 

他方、トラックについては、前方注視を著しく怠り漫然と進行した過失により追突事故を起こしたとして、過失を認めました。また、車線変更車については、車線変更を開始したことにより本件事故が惹起されたとして、過失を認めました。その結果、トラックと車線変更車は共同不法行為により被害者の車両損害について連帯して支払う義務があるとされました。

 

和解の経緯

裁判所から全員に対し、上記の内容で和解するよう打診がありました。

 

和解するにあたっては、トラックと車線変更車との間で、被害者の損害をどちらがどれだけ負担するかも問題になりましたが、裁判所は、トラックが6割,車線変更車が4割負担すべきとし、最終的に、両者がその判断に従ったため、裁判上の和解が成立しました。

 

小林のコメント

①過失の争点について

高速道路上で走行車両が停止することは危険なので、一般的には停止した車両には何らかの過失が認められることになります。しかし、この裁判では、本件のような事情のもとでは被害車両が停止したことはやむを得ないとし、無過失と判断されました。

 

②被害者なのに訴えられた

本件は、没交渉だった加害者から突然、裁判を起こされるという異例の経過を辿りました。通常は、被害者の人身損害(怪我や後遺障害による損害)が確定した時点で、物損を含む全損害について、被害者側から裁判を起こすので、異例な経過といえます。

 

③その後

その後、被害者の人身損害が確定し、トラックと車線変更車の各運転者を被告として提訴し、現在、裁判中です。

 

【2025年5月26日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか

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