【バイク事故判例㊶】合図なしの車線変更車に衝突されたバイクは無過失!請求額どおりの高額賠償が認められた事例

判決の概要

片側2車線の道路で、第1車線を走行中のバイクが、合図なしに車線変更してきた自動車に衝突され、転倒した事故です。

 

本件では、被害者であるバイクの運転者には一切過失がない(過失割合ゼロ)と判断され、後遺障害(併合10級)に対する逸失利益など、請求どおり3,477万円余の賠償金支払いが認められました。

 

  • 裁判所: 京都地方裁判所 令和6年10月3日判決
  • 出典: 自保ジャーナル No.2186
  • 関係車両: バイク(普通自動二輪車) 対 普通乗用自動車

 

事故の状況と争点

1.事故発生の経緯

被害者は、片側2車線道路の左側の車線(第1車線)をバイクで走行していました。その前方、右隣の車線(第2車線)を走っていた自動車が、方向指示器(ウインカー)を出さずに、第1車線に進路変更してきたため、衝突・転倒しました。

 

 

2.裁判での主な争点

自動車側は、「バイクが車線の右端を走っていたから危険であり、バイクにも過失があるべきだ」などと主張しました。

 

裁判所の判断(判決のポイント)

①過失割合について:「バイクは無過失(ゼロ)」

裁判所は、事故の原因は全面的に自動車側にあると認定しました。

 

  • 自動車の過失:自動車が方向指示器(合図)を出さず、左後方確認も行わないまま進路変更したことが事故の原因である。
  •  バイク側の過失: バイクは、第1車線のどの部分を通行しても法的に問題はなく(左側通行義務違反はない)、自動車が合図なしに進路変更してくることを予測することはできないため、バイク側に過失はない(過失割合 0%)と判断しました。

 

②後遺障害の認定

バイクの運転者は、左肘頭骨折、左肩関節挫傷などを負い、約11ヶ月の治療後に症状固定となりました。裁判所は、残存した障害について、以下のとおり認定しました。

 

障害部位 認定等級と理由
左肘関節 10級10号(骨折後の拘縮による可動域制限:可動域が健側の1/2以下に制限)
左肩関節 14級9号(事故当初から症状固定まで継続した疼痛)
最終等級 併合10級

 

この認定に基づき、労働能力喪失率27%と認定され、逸失利益として2,881万円余が認められました。

 

弁護士からのコメント(実務上の重要性)

  • 一般的な基準:自動車が合図を出していた場合など、通常のケースでは「バイク過失2割、自動車過失8割」がベースとなることが多いです。
  • 本件の重要性::しかし、本件では、自動車が方向指示器を出さなかったことが決定的なポイントとなりました。合図がなければ、後方を走るバイクは自動車の動きを予測できないため、バイクには事故発生の責任はないとされ、無過失(過失ゼロ)が認められたのです。

 

示談交渉で保険会社から安易に過失を主張された場合でも、事故状況を詳細に確認し、法的根拠を持って争うことの重要性を示す判例です。

 

【2025年11月9日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか

 

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