【バイク事故判例㉞】原付きバイクで国道を直進中、後方から進路変更してきた乗用車に衝突され、鎖骨・肩甲骨等を骨折し併合9級の後遺障害が残ったケースで、バイクに過失はないとされ、症状固定後の治療費が認められた事例

(平成22年11月25日京都地裁判決/出典:交民 43巻6号1527頁)

けが(傷害)

頭部外傷、右鎖骨骨折、右肩甲骨骨折、右多発肋骨骨折、右肩腱板損傷、右膝挫創、右腸骨部挫傷、腰椎捻挫等

 

治療期間

事故後69日間入院、その後約1年4ヶ月通院

 

後遺障害

自賠責保険の後遺障害等級は併合9級(右鎖骨の変形につき12級5号、右肩関節可動域制限(2分の1以下)につき10級10号)

 

請求額

2,128万円余り(自賠責保険金等の既払い金約730万円を控除後の損害賠償金)

 

判決のポイント

①事故状況

裁判では、事故状況(衝突の原因)も争点となりましたが、裁判所は、バイクは本道内の車線左寄りを直進中で、その後方から乗用車が進行して来てバイクに接近し、追いつきつつあった時点で側道に進路変更したため衝突したと認定しました。

 

②過失割合

裁判所は、事故状況に関する上記の認定を前提に、バイクは制限速度程度で直進していたもので後方から追いつきながら進路変更をして自車の進路を妨害してくる車両を事前に予測して回避すべき注意義務は負わないと述べ、バイクには過失はないと判断しました。

 

③症状固定後の治療費

被害者(症状固定時62歳)は、症状固定後も骨折箇所の疼痛や頭痛が続いたことから、平均余命にわたりペインクリニック等で通院治療を継続して受けるための治療費として580万円余りを請求しました。

 

これに対して裁判所は、今後も治療を要する旨の医師の診断等を根拠に、症状固定後であっても事故と相当因果関係がある治療と評価すべきで、その期間は症状固定後5年間、年間の治療費必要額は30万円であるとして、中間利息控除後の金額として129万8820円を認定しました。

 

小林のコメント

状固定後の治療費について

受傷後の症状が症状固定と診断されると、その後の治療費は原則として損害賠償の対象となりません(後遺障害の問題として評価されます)。

 

例外は、治療が生命維持のために必要不可欠な場合や、症状の悪化を防止するために必要不可欠な場合ですが、実際に認められるケースは少ないでしょう。

 

本件では、訴訟提起後も継続して通院を継続していたことや複数の担当医の意見により、上記のとおり症状固定後に支出された治療費が損害として認められました。

 

【2024年2月10日更新】
執筆者:渋谷シエル法律事務所 弁護士小林ゆか

 

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